伊豆大島で育つ
おいしさと優しい苦みがクセになる元気の源。
島民の食卓を彩り、健康を支えつづけてきた
【明日葉】は、未来に継承すべき文化として、
伊豆大島ジオパーク認定ブランドに登録されました。
Question 1
Question 2
Question 3
Question 4
Answer 1
いちばん愛されてきた野菜。
家のまわりや道端に自然と生えている、
とても身近な存在でした。
明日葉の原産は伊豆諸島。伊豆半島や三浦半島・房総半島、さらには紀伊半島と、太平洋側の半島沿岸部に幅広く自生しています。 ツヤツヤとしていてよく目立つ若芽が穂の形に似ていることから、かつて明日葉は「あしたぼ」と呼ばれていました。「あしたば」という呼称が一般的になったのは昭和の終わり頃、健康ブームで明日葉が広く注目を集めるようになってからだそうです。
伊豆大島は、年間降水量が全国平均の約1.6倍の多雨地域。さらに、年間を通じて強風が吹きます。そんな厳しい風雨から住居や畑を守るための知恵が「防風林」。それらが強い日差しを遮ることで、半日陰を好む明日葉は、家のまわりですくすくと成長しました。 伊豆大島では昔から、その日の食材として、家のすぐそばで摘んだ新鮮な明日葉を調理して食べていました。つまり、手間も肥料も不要で容易に手に入れられる明日葉は、わざわざお店で買う特別なものではなく、食べたくなったら食べたい分だけ採って食べる、とても身近な存在だったのです。
Answer 2
かつては「切り替え畑」の間に
育てられていました。
バリエーションも豊富な明日葉料理が
食卓を彩りました。
若い火山島である伊豆大島の土は、決して肥沃とはいえませんでした。そこで用いられた耕作法が「切り替え畑」です。数年間、作物を栽培し、地力が衰えるとハンノキ(オオバヤシャブシ)をはじめ、オオシマザクラ、ミズキ、ツバキなどを植林。十数年間を経て木々によって土が肥やされたら、木々は伐採され薪炭材となり、土地は再び農耕地として利用されました。この畑の休閑中に、雑木林の下の半日陰で育てられたのが明日葉だったのです。 「切り替え畑」は島のいたるところで見られ、「ハンノキの下で育った明日葉は特においしい」と言われていたそうです。
明日葉は主食、主菜、副菜、汁物、様々な献立の材料として使える万能野菜。明日葉料理は毎日のように食卓に並びました。
Answer 3
気候や土壌が明日葉の生育に適していること。
そして、荒地にも強い
ハンノキ(オオバヤシャブシ)のおかげです。
若い火山島である伊豆大島の土壌は「火山放出物・未熟土」であり土地が痩せています。それでも、明日葉が元気に育つ4つの理由があります。
【1】水: 伊豆大島は日本でも有数の雨の多い島。水を好むセリ科の植物・明日葉に適しています。
【2】土: 伊豆大島の地面には火山灰やスコリアが多く含まれているため水はけが良く、雨が多くても根腐れが起きにくい土壌です。
【3】光: 明日葉は直射日光が苦手です。伊豆大島では、防風林や切り替え畑のおかげで、ハンノキをはじめとする様々な木が半日陰を作り出しています。
【4】栄養:ハンノキの根に生息する根粒菌が空気中の窒素を窒素肥料につくりかえます。その肥料やハンノキの落葉が、明日葉に自然の栄養を与えています。
明日葉を採ったとき、断面からにじみ出てくる黄色い液体が「キサントアンゲロール」と「4-ヒドロキシデリシン」を主成分とした「カルコン類」です。これらが、下記のような機能性を持っていることが科学的に証明されています。
●内臓脂肪の低下・体脂肪の低下・有害な臨床変化なし
※Japanese Journal of complementary and alternative medicine(2012)
●空腹時の血糖値の低下・軽度糖尿病:空腹時の血糖値の低下
※薬理と治療(2007)
Answer 4
繰り返し災害に襲われても、
島民を励ましてくれた明日葉。
島の宝として、その価値はますます高まっています。
島民にとっては、どこにでも生えていた身近な「野草」。それが次第に観光客にも供されるようになり、栽培・販売される「野菜」へと変わっていきました。しかし、昭和53年の伊豆大島近海地震で来島客が激減し、明日葉農家の多くが栽培熱意を失いかけます。そこで立ち上がったのが「有限会社大島明日葉研究所」の創業者、寺田康郎氏。都内各所の観光イベントで、アンコさんが明日葉を配るキャンペーンを実施し、多くの人の注目を集めることで、明日葉を栽培する農家がまた少しずつ増えはじめたのです。さらに、その後の健康ブームによっても着目され、市場価値も上がりました。ここにきてようやく明日葉は、どこにでもあるありふれたものではなく、貴重なものだという意識が島内にも生まれてきました。
平成の終わり頃になると、様々な理由で生産量に陰りが見え始めます。そのひとつが作り手である農家の高齢化です。少子高齢化が進んだことから、栽培を止める農家が急増しました。さらに、追い打ちをかけるように害獣による被害も進みました。野生化したキョンなど、外来生物の増加によるものです。 この島に自生し古くから人々を支えてくれた明日葉。明日葉をとりまく環境をもう一度見直し、伊豆大島の自然がくれた、このすばらしい贈り物を未来に手渡していくために、今まさに積極的な活動が求められているのです。